“忘れた頃にやってくる”と言われている災害が最近は忘れないうちに次々と起こってきます。今地震が起こったら、津波が来ると言われたら、火事だと言われたら私たちはいち早く、できれば身一つで逃げたいです。それには良い視力が大切です。それもメガネもコンタクトレンズも要らない視力です。災害時にはメガネやコンタクトレンズを持ち出す暇が無い場合も多いのです。そこで視力矯正が必要になります。
さて、近視、遠視、乱視などで視力が悪い場合、多くはメガネやコンタクトレンズで矯正します。でもメガネやコンタクトレンズには様々な不都合な点があり、生活がその点で不自由になる場合もあります。災害時にも不便です。その時に行うのが視力矯正手術です。手術を行いますと、ほとんどの場合メガネやコンタクトレンズから解放されるか、装用する頻度を減らすことができ、快適な生活を送ることが保証されます。そして災害時に強くなります。
当院では2000年から視力矯正手術を行い、多くの方に喜んでいただいています。2012年にはフェムトセカンドレーザーのみで行うReLEx SMILE(リレックス・スマイル)を導入しました。この手術はフェムトセカンドレーザーで矯正したい分の角膜を切り、2~4mmの切開創から取り出すという手術です。ヨーロッパでは2005年から数多く行われ、良い成績が報告されていますので当院は注目してずっと学会の動きを見守っておりました。そしてついに2012年日本で4番目の導入を果たました。以来約9年の経験から、この手術は手術時間が短く、傷が小さく、そのため手術後のドライアイが少なく、また視力の安定に優れているということがわかりました。LASIK(レーシック)のフラップがはがれるなどという事故も起こりません。当院はこの優れた視力矯正手術を広く皆様に提供したいという考えで、この手術を中心とした新しい価格設定をしました。
レーザーでの視力矯正ができない強度の近視もあります。その場合は目の中に矯正レンズを入れる、フェイキックIOL(アイオーエル)やICL(アイシーエル)があります。これは非常に質の良い視力が得られるので大変お勧めです。レンズの価格が高いために手術費用が高いのが難点ですが、この点でも当院はできるだけの努力をしてゆきたいと思っております。
ところで視力矯正は40歳以下の方には心配なくお勧めできる手術ですが、40歳過ぎの方には老眼のことを考えていただかなくてはなりません。車の運転がメガネなしでできるようになって嬉しい反面新聞や書類が見にくいということが起こります。今のところそれまでをも満足でき、当院がお勧めできる理想的な視力矯正手術はほとんどありません。
そして、白内障がある方には、老眼までを含めて解決できる水晶体再建術がおすすめです。白内障の手術をする時に眼内レンズを入れますが、その時に遠近両用の眼内レンズ(多焦点眼内レンズ)を挿入しますと、ほとんどの方は一般的な生活ではメガネをかけないで暮らせるようになります。これは大変便利です。このような眼内レンズは特殊な構造で、数々の工夫をこらして、いかに手術後の眼鏡の使用を減らせるかを競っており、高価なために手術は通常の保険診療ではできないものが多いです。しかし最近、健康保険診療でも使用できる、大変優れた多焦点眼内レンズが登場しましたので、私はそのレンズが適しているであろう方にはそれを挿入する手術を数多く行っています。多焦点眼内レンズは適す人とそうでない人とあるので、術前の慎重な診察でご相談させていただいています。
このように、視力矯正手術は若い人の近視、乱視、遠視の手術から、高齢者の水晶体再建術まで幅広く、その適応に応じてよい手術を選んでゆくことが必要です。
視力矯正手術がうまく行くと、地震が来ても津波が来ても火事になっても身一つで逃げ出し、その後の避難生活も安心になります。動物的に強くなるという点で皆様に受けていただきたい手術の一つです。